6月14日(水)

Hotel Windsor
 

この日は午前中の講演はそれほど興味がなかったので、朝はわりとのんびりと出かけました。大学へは42系統のバスで行けばいいと思っていたので、ホテルの近くのバス停で42系統のバスに乗ったのですが、雰囲気が違うのでどうも違うバスに乗ったらしいということが分かってきました。(大学行きのバスは、Odenseの駅とは全く違う場所から出発しているようで、私はその逆方向に乗ってしまったのでした。) まあ、それほど急ぐ必要もなかったのでそのまま乗って、適当なところで降りることにしました。幸い、その出発地点は大学のある方角とは著しく離れているわけではなく、適当に降りたところから歩いて行けそうな距離だったのでそのまま大学まで歩いて行きました。途中広い麦畑などを通り抜けて行きましたが、大学までは40分ほど歩いただけでたどり着きました。

 この日聴いた講演を紹介しておきます。ちなみに、私が行っていたセッションは、「正則写像の線型空間」のセッションと「力学系」のセッションでした。多変数函数論のセッションもありましたが、残念ながら聴きたいものは他の講演と重なるという具合で行く機会はありませんでした。(Forstnericの講演くらいは聴きたかったのですが。)

X. Buff, A holomorphic fixed point formula for polynomial-like mappings

別のセッションに移る必要があったので最初の15分しか聴いていませんが、holomorphic fixed point formula (cf. textbook by Milnor)に関する結果を多項式類似写像について拡張したというものでした。なお、これはA. Epstein, Bergweilerとの共同研究とのことでした。まだ若いToulouseの人。

J. Shapiro, The numerical range of a composition operator

Hilbert空間H上の線型作用素Tのnumerical rangeとは{<Tx,x>;  x∈H s.t. ||x||=1}のことで、HがHardy空間、Tがcomposition operatorの場合に、いつnumerical rangeが0を内点として含むか、ということについて講演をしていました。

C. Henriksen, Julia sets in parameter spaces

セッションをまた移って遅れて部屋に入ったので、ちょっとついて行けませんでしたが、どうやらintertwining mapの話のようでした。Mandelbrot集合の直積と3次多項式の空間とを対応づけようというものでしたが、メインの主張は組み合わせ的なデータだけからqc共役性が従うということらしくて、本質的な部分でholomorphic motionを使っていたようです。彼が少し不正確なことを言うとすぐにMcMullenらから指摘があるので、後で彼が話していたように、聴衆の方がよく分かっていてやりにくいようでした(^_^;)

D. Girela, Univalent functions in some Mobius invariant spaces,

大雑把に言えば、単連結領域を表現する単位円板からの等角写像がいつ解析的Besov空間に属するか?という問題を扱っていました。いずれにしても、私にとっては「正則写像の線型空間」の中では唯一興味のある話題だったので、プレプリントをくれるように頼んでおきました。彼と会うのは4年前のSegovia、2年前のLublinに続いて3度目でしたが、そういう意味で顔なじみと言えるほどなのはこのセッションの中では彼くらいでした。(ただ、このために複素力学系のPilgrimの講演が聴けなかったのは残念でした。)

H. Thunberg, Unforlding of chaotic unimodal maps and parameter dependence of natural measures,

他に聴きたいものもないので聴いたというだけでしたが。パラメータに関しては対応する自然な測度がある意味で不連続(chaotic)に変わるというようなことを主張していました。かなり技術的なことを細かく説明していて、私にはよく分かりませんでした。この時はほとんど大物は姿を消していて、Milnorくらいしかいなかったようですが、その彼も講演終了時にほとんど拍手をしていませんでしたね(^_^;)

R. Mortini, Prime ideals in the algebra of bounded analytic functions,

あるGleason partでvanishするという函数の全体は素イデアルをなすわけですが、そういうクラスはそのclosed convex hullだけで特徴づけられるか、というようなことを問題にしていたようです。この辺の話は微妙でなかなか難しいですね。

T. Lance, Projective generators in Hardy and Bergman spaces,

内職をしていたのであまり聴いていませんでした。

S. Jakobsson, The Bergman kernel, the Friedrichs operator and biharmonic Green function,

biharmonic Green functionというのは、ラプラシアンを2回やると消えて、境界条件としてはDirichlet条件とNeuman条件を同時に課すようなものです。その場合は一般には正値性が保証されないようですが、どういう条件の下で正値性が言えるかということを問題にしていました。Hilbert空間における2つの閉空間の直和への射影を、それぞれの射影P,Qで表そうとしたとき、P+Q+PQ+QP+…となるようなのですが、Friedrichs作用素がそのPQ+QPに対応するものだという説明が面白かったです。まだ若い人でしたね。

そういえば、複素力学系のセッションのA. Epsteinの講演はキャンセルになっていました。どうも、そもそもregistrationもしていなかったようですから、勝手に講演者に加えられていたというパターンだったかもしれません。Buffあたりに訊いてみようと思っていて忘れてました。

終了後はバスで帰りましたが、宿に着いたらもう8時を回っていました。それから食事をするところを探してOdenseの町を色々歩いたのですが、市庁舎の前で写真を撮っていると親切なおじさんが「撮ってやろう」と言って撮ってくれました。それが下の写真です。ただレストランで食べると100〜200 KRはかかるようだったので、結局あまり良いところが見あたらず、食べるのはあきらめてさっさと寝ることにしました。そういえば、歩行者天国になっている通りをずっと歩いていった先にあった、H. J. Hansenとかいうお店は、非常に良い食品店のように見えました。ワインだけでも相当な量がありましたし、その他おいしそうな食品が多数売られているようでした。残念ながら私が行ったときには既に閉まっていましたが。(その後結局行く機会がなかったのが残念です。) Odenseのガイドブックに出ている広告によればコペンハーゲンを含めて3店舗くらいあるようです。Odenseであれだけ立派なんだったら、コペンハーゲンのはもっとすごいのか?と思ってしまいます。(でも、本店はOdenseだったりして。)
 

市庁舎の前で