6月19日(月)

午後からは時間があったので、本当はGrindavikというところに自転車で行こうと思っていたのですが、そこは前日に行ったGeysirのような感じの日本で言う「地獄」のような感じの場所らしいので、今更という気もしたのでこの日は少し趣向を変えてEsjaに山登りをすることにしました。少し調べてみると市バスが山の麓を通っているようなので、とりあえずそこに移動。バスは一度途中で乗り換える必要がありましたが、乗り換えたいことを運転手に告げれば、乗換券のようなのをくれてそれが45分程度有効になり、その時間内であれば無料で次のバスに乗れる仕組みになっています。ということで、バスの所要時間は全部で30分以上というかなり長い距離ながら、やはり150ISKでその山の麓までたどり着くことができました。

Esjaという山はレイキャヴィク市内からもよく見える山で、この時期でも雪が谷筋に沿って残っており、まさにレイキャヴィクのシンボルのような山です。実際に、レイキャヴィクのある高級ホテルの名前にもなっています。高さは1000m弱ですが、海水面とほぼ同じ高さからせり上がっているという感じなので、実際に感じる高さはかなりのものです。しかも、いわゆるtable mountainというタイプの山で、山頂付近がテーブルのように平らになっていて、その下は急な崖になっているという感じです。どうしてそういう山が出来たのか私はあまり詳しくないので知りませんが、上の方に固い溶岩の層があってそれが浸食されずにテーブルのように残ってあのような形になっているようです。

バスから見たEsjaの山並み
 

登山口とおぼしきMoglisaというバス停で降りましたが、他に降りる人もなく本当にここが登山口かとも思いましたが、確かに立派な案内図もありましたからそれなりに登山客も多いのでしょう。特に前日は日曜日でしたから、多くの踏み跡が残っていました。この日は月曜日ということで登山客はほとんどいなかったようです。そもそもこの山に登るということ自体が観光ガイドなどに書かれていないので、外国人観光客でこの山に登ろうという人はほとんどいないのではないかと思われます。

このルートからはThverfellshorn(実際にはThは、pに似た文字)という780mのピークに登れるようになっているようです。道は非常によく整備されていましたので、他に登山客がいないながらも安心して登れました。途中には荒れ地に咲く紫色の綺麗な花が咲き乱れていました。ある程度の高さまで来るとまだ谷間に雪が残っています。気温は5度くらいでしょうか。じっとしていると肌寒いですが、歩いているとその涼しさがちょうど心地よいくらいでした。

遠くに見えているのがレイキャヴィク市街

右に見えるのがKistufell(843m)の頂
 

table mountainの構造上、麓の方はまだ斜度は比較的低いのですが、テーブルの直下では非常に急峻になってきます。道も崖を登るような感じになってきて、踏み跡はかなりはっきりしているものの、ちゃんとした道標はないのでルートを間違えると大変なことになります。そういう点で、登山に不慣れな人はガイド付きで登った方が安全だと思います。私も一度間違えて、テーブルの直下の崖を横切るようなものすごい道に迷い込んでしまいました。(そういう誤ったルートですら、同じように間違える人が多いのか、結構はっきりした踏み跡が残っていたりするので、注意が必要です。間違えたと感じたら、迷わず確実なところまで引き返すのが正しい選択でしょう。)

ということで、登山開始から約2時間でThverfellshornに到着。そこにはちょっとしたケルンが作ってあるだけで、山の名前を書いた札のようなものもなく、非常にあっさりしたものでした。敢えて自然には手を加えないという姿勢が感じられます。このテーブルの上の部分はいったいどうなっているんだろう?という素朴な疑問が今回の登山の主な動機だったりもするのですが、写真のように溶岩と苔ばかりの、意外とごつごつして歩きにくい台地になっていました。登ってみるとそこからは道はなく、まあどこでも歩けないことはないけれども、かなり歩きにくいという感じがしました。

まるで月面のような山上の台地
 

買ってきた10万分の一の地図を見ると、山上にもルートが書いてあったのですが、上にも書いたように実はそのような道は全くなく、どこを歩いてもいいという感じでした。ただ、「歩ける」というだけで、決して歩きやすいわけではなく、苔の上はスポンジのような感じで気持ち悪いので岩の上を飛び移るような感じで歩いていました。予定ではKistufellまで行って、引き返して山並みの反対側まで歩ききる積もりでしたが、山上は意外と歩きにくいということでKistufellまで行くことはあきらめて、とりあえずEsjaの一番高いピークであるHabunga (914m)を目指すことにしました。歩いてみると乾燥の度合いに応じて苔の生え方が違っていてなかなか面白かったですね。途中で完全に雪に覆われた部分を通ってようやくピークに到着。10万分の1の地図を見ているので、地図で見るよりも意外と遠いという感じがしましたね。なお、雪の上には踏み跡はなく、どうやら前日の日曜日に来た人たちはここまでは到達していないような感じでした。

雪に覆われたHabungaの山頂
 

元々の計画では、山の反対側まで歩いて行くつもりでしたが、遠くからルートを見るとどうも湿地帯のような感じだったので、ルートがはっきりしない状態ではそこに踏み込むのは危険と判断して、ルートを変更することにしました。Kistufellから降りるルートもあるようなのですが、非常に急なルートのようだったのでそこはやめて、Hatindurという909mの別のピークまで到達してから、そこの尾根伝いに降りるルートを選びました。そのルートだと比較的緩やかなところを歩けるようでしたので。行ってみて実際にルートがあるかどうか不安でしたが、ピーク付近では確かに踏み跡があったので安心しました。ただ、降りていくとルートが途中からはっきりしなくなって、いずれ完全になくなってしまいましたが。アイスランドの場合は、木がほとんど生えていないので、ある意味でどこでも歩けるような場所にはよほど整備された登山道でない限りは踏み跡ははっきりしなくなる傾向があるようですね。

Hatindurのピーク

ここを降りてきました

Hatindurからの下りの道は、踏み跡がないわりには困難でなかったものの、とにかく距離が長いのには閉口しました。山頂から麓まで歩くのに約1時間、さらにその麓からMoglisaのバス停まで戻ってくるのにさらに2時間かかりました。麓からはようやく自動車が通れるくらいの道があるのですが、途中で川があって橋がかかっていないところがありました。普通ここまで来る人は四駆でしか来ないので問題ないのでしょうけど、歩いて渡るにはかなりの幅なので、少し下流で別の川に合流する辺りで何とか跳んで渡れる場所がないかと探したのですが、結局見あたらず最後にはあきらめて、靴を脱いで歩いて渡りました(^_^;)

いずれにしても、大自然を前にして自分がいかに小さい存在であるかを思い知らされた一日でした。そういう意味では良い経験になりました。ただ、このルートは、かなりの山岳経験者以外の人にはお勧めできませんね。私の場合は天気が比較的良かったからルートがはっきり分かって問題もなかったですが、山上で一旦天候が悪化すれば休む場所もないですし、それなりの装備がなければ面倒なことになりそうです。まあ、登るとしてもThverfellshornまででとどめておくのがいいと思います。
 

ということで、20:10の最終バスにぎりぎり間に合う時間にようやくバス停に戻ってきました。バス停は道路から少し入ったところにあって、そこでバスを待っていたのですが、バスは無情にもバス停に立ち寄りもせずに通過していきました(^_^;) (滅多に人が乗ってこないので、おそらく通過したのでしょう。バスに確実に乗るには道路脇でバスを待つのが確実のようです。ただし、ちゃんとした歩道はなく、車は時速100km以上で飛ばしていきますので、多少の覚悟は必要です。名神高速の路肩でバスを待つようなものでしょう(笑))
そんなわけで、しかたなくレイキャヴィクに向かって歩き始め、時折ヒッチハイクを試みましたが車は全然止まってくれないので、あきらめてそのまま歩き続けていると、しばらくして車が一台停車してくれて、親切なおばさんがバスを乗り換えたターミナルまで送ってくれました。そのおばさんは英語が堪能で、色々話をしながら乗せてもらっていましたが、Esjaへの登山というのも比較的ポピュラーだそうですがそれも時期があるらしい、というようなことを話してもらいました。

まあ、そんなわけで色々ありましたが無事に市内に戻ってきて、お腹も空いたので適当に見つけたタイ料理を出してくれるカフェのようなところに入ってカレーを食べました。1000ISK程度で意外とおいしかったですけどね。

なお、バスの運転手のストライキはまだ続いているらしく、翌日空港にどうやってたどり着くかという問題が残っていたのですが、この日の朝にゲストハウスオーロラの宿の奥さんが、他のゲストハウスに問い合わせて同じ時間帯の飛行機を利用する客が他にいないか探してみて、いたらタクシーをshareできるように交渉してくれるということになっていたので、私自身では何も対策をしておりませんでした。しかし、宿に戻ってみると宿のオーナーとは連絡が取れず、どうなっているのか書き置きのようなものもなかったので、最悪の場合は自分でタクシーを呼ぶしかないということで、公衆電話がどこにあるかを確認するなどそういう作業をしてから帰る支度を整えました。公衆電話は、レイキャヴィクのメインストリートに1台あるだけで、しかもテレフォンカードは使えないタイプのものでした。それでもないよりはマシでしたが。確実に電話機があるのは、ホテルや観光案内所と大きなバスターミナルくらいでしょうか。